はじめに
「巷にはさまざまな英語試験があふれているけれど、ビジネスに特化したものはないの?」
このように感じたことはないでしょうか? TOEICのスコアを英語能力の指標として参考にしている企業は多くありますが、試験の点数だけでは、その人がビジネスの現場で英語を用いて何ができるのかということまでは分かりません。
そんな中、ビジネスの現場を想定した英語試験――「PROGOS(プロゴス)」のスピーキングテストが注目されつつあります。オフィスでの会話やプレゼンテーションで使える英語力を判定することができる試験です。
この記事では、レアジョブ・スピーキングテスト(PROGOS)の概要、また実際に受験してみて分かったことや感想について記していきます。これから受験を考えておられる方の参考になれば幸いです。
1 PROGOSとは&テストの概要
正式名称「レアジョブ・スピーキングテスト powered by PROGOS」と呼ばれるこのテストは、ビジネスの場面での英語使用を想定した英語の試験です。特徴としては(1)自宅から受験ができる。(2)試験時間が20分程度と、とても短い。(3)試験結果をすぐに見ることができる。(4)国際的な指標CEFRに準拠したスコア(後述)を教えてくれる。(5)受験後のフィードバックがとても充実している、などが挙げられます。
もっと詳しく知りたいという方がおられたら、以下の記事を読んでみてください。
2 PROGOSを受ける前にやったこと
① 試験対策
正直なところ私は、対策という対策をほとんどせずに受験しました。私自身、大学時代に英語科に通っていたこともあり、英語は得意な方だと自負しています。力試しということで、あえて試験勉強をほとんどせずに臨むことにしました。
とはいえ、なんの準備もしなかったというわけではありません。事前に知っている情報は多ければ多いほど心強いものです。ということで、インターネットでPROGOSについて調べることにしました。
結論から言うと、公式のホームページまたYouTubeで公開されている情報がとにかく役に立ちました。特に、「【サンプル問題解説/回答ポイント】PROGOS ビジネス英語スピーキングテスト」というタイトルの公式動画がオススメです[1]。実際の問題で用いられている音声を聞きながら、何が問われているのか、また模範的な回答はどのようなものがあり得るか、などを詳しく解説してくれています。実際に受験を考えておられる方には、ご視聴されることをオススメします。
②受験環境の準備
自宅で英語試験を受けるのが初めてで不安を抱いていた私でしたが、公式ホームページ[2]の情報がとても助けになりました。
「よくあるご質問」の項目では、「PROGOSとはなんですか?」というような基本的な質問から、「スピーキングテストの問題構成を教えてください」や「受験に必要なPC機能と推奨環境を教えてください」などのような超実用的な質問まで、いずれも丁寧かつ詳しい回答が記されています。実際に受験される際は、一通り目を通しておかれることをオススメします。
マイク付きのイヤホンは必要?
自宅で英語試験を受験するのが初めての人にとって、「どのような環境が必要なのか?」はかなり気になるポイントなのではないでしょうか。環境や機器の準備不足のために適切な採点をしてもらえない、ということもあり得ます。そうなってしまわないように、受験環境を整えておくことが必要です。
必要な機器として、公式ホームページには「マイクとスピーカー機能のあるパソコン、スマートフォン、タブレットを使用してください。またマイク付きヘッドホン・イヤホン・ヘッドセットが必要です」と書かれていました。
しかし私はマイク付きイヤホンを持っていなかったため、パソコンだけで受験に臨みましたが、なんの問題もありませんでした。パソコン内臓のマイクが激しく損傷でもしていない限り、マイク付きのイヤホンを準備する必要はないようです。とはいえ採点に影響がでないよう、家族がいない時間帯に、念のためエアコンの風量を最小限に抑えておくなど、受験環境を整えた上で試験に臨みました。
3 PROGOSを受けた後の感想
試験の感想について記す前に、大まかな構成と、質問数、準備時間、回答時間を表にまとめましたので、まずはこちらをご覧ください。
構成 | 質問数 | 準備時間 | 回答時間 | |
Part 1 | インタビュー | 10問 | なし | 各問20秒 |
Part 2 | 音読 | 8問 | なし | 各文章10秒 |
Part 3 | プレゼンテーション | 1問 | 40秒 | 60秒 |
Part 4 | グラフを用いたプレゼンテーション | 1問 | 40秒 | 60秒 |
Part 5 | ロールプレイ | 4問 | 40秒 | 各応答30秒 |
Part 1から順番に始まり、Part 5の回答が終わった時点で終了となります。時間を計りながら受験したところ、私は約15分で終了することができました。
スキップボタンについて
実は、Part 3, 4, 5の準備時間はスキップすることができるのです。「準備に40秒も要らない」という方は、スキップのボタンを押せばすぐに回答に移ることができます。
それだけでなく、なんと全パートの回答時間もスキップできてしまうのです。「回答が早く終わった方はこのボタンを押してください」というボタンがあり、それを押すと、次の問題へと移ることができます。私はこのボタンを結構な頻度で押しました。特にPart 2の音読では、文を読み終わればすぐにスキップを押して、どんどんと次の問題へ進みました。
しかし、このスキップボタンには注意が必要です。というのも、Part 5のロールプレイの際、会話相手の質問を聞かなければ何を答えるべきか分からないにも関わらず、その質問が再生される前にスキップを押してしまったのです。そのあと30秒の回答時間が与えられていますので、とにかく何か話さなければなりません。「ボタンを押し間違えて質問を聞き逃しました・・・なんて言っても仕方ないですよね。勘で答えます」というように、なんとか無音にならないようには努めましたが、おそらく採点対象にはならなかっただろうと思います。スキップボタン、どうぞ気をつけてご使用ください。
4 各パートのポイント
それでは、パートごとにどのような問題が出題されて、何がポイントとなるのかを一つずつ紹介していきます。
Part 1 インタビュー
短い質問を聞き、答える。
全10問 回答時間:各20秒
「今日は何月何日ですか?」 などのような簡単なものから、「ここ2年間で、あなたの仕事にはどのような変化がありましたか?」や「あなたのオフィス環境について詳しく説明してください」などのようなものまで、さまざまな10個の質問に答えるパートです。質問は一度しか尋ねてくれませんので注意が必要です。一瞬でもボーッとすると聞き逃してしまいます。また準備時間がないため、素早く回答をまとめなければならなかったのが大変でした。
Part 2 音読
表示された文章を、発音やイントネーションに注意しながら読み上げる。
全8問 回答時間:各10秒
このパートのコツは、焦らずゆっくり読むことです。回答時間は、各文10秒与えられていますが、いずれも自然なスピードで読めば5秒以内に読み終わるものばかりでした。「回答時間内に読み終われないのではないか」という心配は無用です。むしろ心がけるべきは、ゆっくりと、意味の区切れを意識しながら、つっかえずに読み切るということです。私自身、最初は緊張で早口になってしまいました。
Part 3 プレゼンテーション
あるトピック/タスクが与えられ、できるだけ詳しく説明する。
全1問 準備時間:40秒 回答時間:60秒
あるトピックとそれに関して具体的に話すべき内容が指定され、それを説明する問題です。私が提示されたトピックは「残業」についてでした。さらに具体的に話すべき内容として「なぜ残業するのか?」「どれくらいの頻度で残業するのか?」などの指定がなされていました。その指定に沿って話を深めていけば、充分な回答ができるでしょう。このパートから準備時間が設けられますが、40秒は思ったよりも早く過ぎていきます。私は細かい下書きを準備するのではなく、話したい内容を表すキーワードを話したい順番に書きなぐった簡単なメモを作って回答に臨みました。
Part 4 グラフを用いたプレゼンテーション
あるグラフや図が与えられ、できるだけ詳しく説明する。
全1問 準備時間:40秒 回答時間:60秒
グラフまたは図について説明するパートです。私はこれが一番難しいと感じました。まず、ある程度の定型表現をストックしておく必要があります。例えば、This graph shows …(このグラフが示しているのは…)やincrease(増える)またdecrease(減る)などの表現です。「できるだけ詳しく」という指定もありますので、まずは縦軸と横軸それぞれの情報を把握し、何がどのように推移して行っているのか、またその推移から何が分かるか、などについて話す必要があります。私は難しいと感じましたが、話すべきパッケージはある程度決まっているので、事前の対策を十分にしていればもっと落ち着いて回答できていたかも知れません。
Part 5 ロールプレイ
誰かと会話をしている設定で4つの質問がなされ、その全てに回答する。
全4問 準備時間:40秒 回答時間:各30秒
最初にどのような状況にいるのかという設定が提示され、その場面において、会話相手からの3つの質問に答えるという問題です。このパートの流れとしては、「状況の指定 → 回答すべき大まかな内容の提示 → 準備時間(40秒) → 質問1 → 質問1への回答(30秒) → 質問2 → 質問2への回答(30秒) → 質問3 → 質問3への回答(30秒) → 質問4 → 質問4への回答(30秒)」となっています。はじめの40秒の準備時間の中で、尋ねられるであろう質問を予想しながら回答を準備するのがコツです。上にも記しましたが、このパートでは「スキップボタン」を押さないように注意してください。もちろん、会話相手の質問を聞き逃さないことも重要です。
5 結果と振り返り
なんと、試験を受けてから10分後には結果を見ることができました。気になる総合評価は・・・CEFR準拠レベルで【B2】でした。
言語能力を測る指標としてCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)が優れているのは、各レベルを「能力記述文」――すなわち、その言語を用いて何ができるか――によって具体的に記述してくれている点です。
CEFRについて詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。
「転職にも有利な英語力指標!PROGOSで自分のCEFRレベルを知ろう!」https://speaking-test.com/cefr/
さて、総合評価【B2】の能力記述文には「自分が興味ある話題に関して、準備をすれば詳細なプレゼンテーションができます。十分な範囲の単語や表現を使い、自分が興味ある話題に関して議論ができます」とありました。
さらにレアジョブ・スピーキングテストは、①表現の幅(Range)、②正確さ(Accuracy)、③流暢さ(Fluency)、④やりとり(Interaction)、⑤一貫性(Coherence)、⑥音韻(Phonology)という指標別の評価も教えてくれます。
例えば、私のスコアレポートの「表現の幅」(評価は【B2 and above】)の部分には次のように記されていました。
「自分自身の興味がある領域では、ほとんどの一般的な話題について、明確で細部に渡る描写をしつつ、重要な論点とその根拠をメリハリをつけて話すことができます。それを叶えるだけの充分な言語表現を適切な言葉の組み合わせを含め使うことができます。」
これはとても参考になりました。というのも、「結局、英語を使って何ができるの?」と問われた際にどのように答えるか、についてのヒントを与えてくれるからです。上の文章を自分の言葉に言い換えるだけで、自己アピールの文章を手に入れることができます。
私が最も成績が悪かったのは「正確さ」(評価は【A2】)の部分で、次のように記されていました。
「いくつかの簡単な文章パターンや構文を正しく使えるものの、動詞の時制や主語と動詞を一致させられないなどの初歩的なミスをしてしまいます。」
この文章の下には<レベルアップへの学習アドバイス>と<具体的な学習例>が書かれており、自分の弱点を補うために何をすればいいかを把握することができます。
具体的な学習例として、私は以下のようなアドバイスをもらいました。「想像の話や仮の話などをするときは、『if+主語+動詞の過去形、主語+would (could / might) +動詞の原形』を使います。下記の例文を見ながら、『もし〇〇(する)なら、△△(する)のに』という文章を作り練習しましょう。」自分の弱点を明確にしてくれるだけでなく、それを克服するための具体的なアドバイスも得ることができる。とても大きな収穫でした。
ご参考までに、各指標別評価の一部を以下に掲載しておきます。
おわりに
レアジョブ・スピーキングテスト powered by PROGOSは、ビジネスの場面で使う英語力を図るための試験としてはかなりレベルの高いものだと感じました。特に、プレゼンテーション能力を測るPart 3とPart 4は、とても実践的です。これらのパートのための試験勉強をすることで、実際のプレゼンテーションで用いる英語表現を数多く習得することができるでしょう。またPart 5のロールプレイも、実際に職場で起こり得る状況が想定されていて、リアリティがありました。
自宅で受験することができ、しかも所要時間は20分以内。弱点を明確にしてくれるだけでなく、今後の具体的な学習方法も教えてくれる。そんなPROGOSのスピーキングテスト、皆さんもぜひ受験してみてください!
[1] 「【サンプル問題解説/回答ポイント】PROGOS ビジネス英語スピーキングテスト」 https://youtu.be/vwuKiLueiXk (最終閲覧日2021年12月14日)
[2] 「レアジョブ・スピーキングテスト(レアジョブ英会話)」 https://www.rarejob.com/experiences/speakingtest_progos/ (最終閲覧日2021年12月14日)